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小原 真司*; 鈴谷 賢太郎; 竹内 謙*
未来材料, 5(4), p.28 - 33, 2005/04
高温融体を無容器(コンテナレス)で浮かせることができると、冷却の際に結晶化の核となるものがなくなるので過冷却液体状態の実現が容易になる。そうすると、過冷却液体からの緩やかな冷却で、これまで作製が不可能であったさまざまなガラス・非平衡物質の合成が可能となる。主要造岩鉱物で地球・宇宙科学的に重要なフォルステライト(かんらん石)も、このコンテナレス法により高純度ガラスが得られる。本報では、この高純度フォルステライトガラスの合成と構造研究を中心にコンテナレス法の物質科学における有用性の一端を示す。
小原 真司*; 大石 泰生*; 高田 昌樹*; 米田 安宏; 鈴谷 賢太郎
日本結晶学会誌, 47(2), p.123 - 129, 2005/04
第3世代放射光からの高強度高エネルギーX線回折を利用すると、その短波長と高透過能から、透過法で広いQ領域を迅速に測定することが可能になる。われわれは、最近、SPring-8における高エネルギーX線回折とパルス中性子回折を組合せ、さらにこの両データに逆モンテカルロシミュレーション法を適用することにより、これまで不明であったガラスや液体など非晶質物質の「乱れた構造」を三次元可視化し、その詳細を理解することに成功した。本稿では、その実験の詳細と酸化物ガラスと強誘電性半導体混晶の成果について解説する。
小原 真司*; 鈴谷 賢太郎; 竹内 謙*
日本マイクログラビティ応用学会誌, 22(2), p.100 - 104, 2005/04
地球・宇宙科学上で重要な鉱物であるかんらん石(Forsterite, MgSiO)は、稜共有のMgOをSiO四面体が繋いでいる典型的なケイ酸塩鉱物であるが、ケイ酸塩鉱物結晶のフレームワークを形成するSiO成分がMgOの半分のモル比であることから、SiO四面体の鎖状,環構造をもたない。そのためガラス化が大変困難であった。われわれは、ガスジェット音波浮遊法という坩堝を使わない方法を用いて、このかんらん石の高純度ガラスを作製し、高エネルギーX線回折,中性子回折の併用と、逆モンテカルロシミュレーションの適用により、その構造を調べた。その結果、ガラスにおいても、SiO四面体によるネットワーク構造は存在しないが、MgO(n=4,5,6)の多面体ユニット(MgOが一番多い)が、頂点,稜共有でネットワークを構成しているという特異な構造を持っていることが明らかになった。
小原 真司*; 鈴谷 賢太郎
Journal of Physics; Condensed Matter, 17(5), p.S77 - S86, 2005/02
被引用回数:84 パーセンタイル:90.9(Physics, Condensed Matter)高エネルギーX線回折と中性子回折によってシリカ(SiO),ゲルマニア(GeO)ガラスの構造因子S(Q)を測定し、異なる情報を持つX線・中性子のS(Q)を十分に表現できる大規模な構造モデルを逆モンテカルロ法(RMC法)により構築することに成功した。この結果、基本構造であるSiO, GeO四面体の繋がり角度分布などの中距離秩序構造が実験的に明らかになった。シリカ・ゲルマニアガラスでは、四面体の6, 7員環が中距離構造の基本である。また、ゲルマニアガラスにはシリカよりも多くの3員環が含まれており、シリカとゲルマニアガラスの中距離秩序は異なる。これらの結果は、従来のRaman散乱などによる予測と一致する。
鈴谷 賢太郎
波紋, 13(1), p.51 - 55, 2003/01
第三世代放射光源SPring-8より得られる高強度の高エネルギー単色X線(E30keV)を用いた回折実験と中性子回折との併用について、酸化物ガラスの構造研究を例に解説した。現在、SPring-8の高エネルギー単色X線の持つ短波長,高透過能から、回折実験によって、高い散乱ベクトルQ(300nm)まで吸収補正などのデータ補正のほとんど必要ない精度の高い構造因子S(Q)を得ることが可能となっており、従来のパルス中性子回折に匹敵する量と質のデータがX線回折でも得られようになりつつある。基本的なネットワーク形成酸化物ガラスの中距離構造(ネットワーク構造)は、この高エネルギー単色X線回折とパルス中性子回折による高精度のS(Q)データに、逆モンテカルロ・シミュレーション(Reverse Monte Carlo Simulation = RMC)法を適用することによって、解析が可能になってきている。中距離構造は、ランダム系物質の物性を研究するうえで最も重要なファクターであり、今後、ランダム系物質の特異な物性は、高輝度放射光源,パルス中性子源を利用した回折,非弾性散乱実験,計算機シミュレーションとの併用によって、明らかにされると考えられる。
松本 一彦*; 萩原 理加*; 伊藤 靖彦*; 小原 真司*; 鈴谷 賢太郎
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 199, p.29 - 33, 2003/01
被引用回数:34 パーセンタイル:88.67(Instruments & Instrumentation)低温型溶融塩:1-エチル-3-メチルイミダゾリウムバイフルオライド (EMImFHF)融体の333Kでの構造を、SPring-8における放射光高エネルギーX線回折で調べた。この融体の全相関関数は、固体結晶のそれと大変良く似ており、短範囲構造だけでなく、中距離構造も融体と結晶では似ていることがわかった。分子内のF-F相関は、この融体では明確に観察された。これは室温型溶融塩1-エチル-3-メチルイミダゾリウム フルオロヒドロゲネート(EMImF2.3HF)融体の場合とは異なっている。
小原 真司*; 鈴谷 賢太郎
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 199, p.23 - 28, 2003/01
被引用回数:34 パーセンタイル:88.67(Instruments & Instrumentation)第三世代放射光施設における高エネルギーX線回折は、液体やアモルファス固体,ガラスなどのランダム系物質の構造解析に大きな進歩をもたらした。特に、X線の波長が短いため、高い散乱ベクトルQまで測定できるので、実空間分解能が飛躍的に向上した。また、X線の強度と透過能が高いため、少量の試料を透過法で測定できるので、高温高圧下での測定も比較的容易である。したがって、これまで(パルス)中性子回折によって調べられてきたランダム系物質のデータとの直接比較が可能である。われわれは、SPring-8において、ランダム系物質専用の高エネルギーX線回折計を建設し、いくつかの酸化物ガラス(SiO及びGeOガラス)の中距離構造を明らかにした。特に、高エネルギーX線回折とパルス中性子回折の両データに、逆モンテカルロシミュレーションを適用し、中距離構造を含むガラスの大きな構造モデルの構築に成功した。これらの高エネルギーX線回折を中心とした、ランダム系物質の短・中距離構造の精密な構造解析法は、高温下でのランダム系物質の構造変化を調べる研究などにも適用され、SiOガラスは1000の高温下でも短距離構造は変化せず、わずかに平均的な中距離構造に変化が現れるだけであることが明らかになった。
萩原 理加*; 松本 一彦*; 津田 哲哉*; 伊藤 靖彦*; 小原 真司*; 鈴谷 賢太郎; 松本 一*; 宮崎 義憲*
Journal of Non-Crystalline Solids, 312-314, p.414 - 418, 2002/10
被引用回数:32 パーセンタイル:85.82(Materials Science, Ceramics)あるN-アルキルイミダゾリウム塩化物あるいはN-アルキルイミダゾルと無水フッ化水素(HF)の反応によって、無揮発性の室温型溶融塩を得ることができる。その室温型溶融塩は、XF2.3HFであり、ここで X=1-エチル-3-メチルイミダゾリウム (EMI),1-メチルイミダゾリウム (MeIm),1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム (BMI),1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム (HMI)である。室温での最大の固有導電率では、10mScmという高い値がEMIF2.3HFに関して得られている。そこで、これらの各室温型溶融塩についてSPring-8にいて高エネルギーX線回折による構造解析を行った。その結果、溶融塩中にもEMIFHF結晶の構造と類似のカチオンとアニオンの規則的な構造が存在することが明らかになった。この規則構造が、これらの室温型溶融塩の低粘性率の原因、ひいては高導電率の構造的な要因と考えられる
鈴谷 賢太郎; 小原 真司*
まてりあ, 41(3), p.206 - 215, 2002/03
第三世代放射光源SPring-8より得られる高強度の高エネルギー単色X線(E30keV)を用いた回折実験及び実験装置(BL04B2高エネルギーX線回折用2軸回折計)の概要と、その高エネルギー単色X線回折によるランダム系物質:酸化物ガラスの構造研究の現状について解説した。高エネルギー単色X線の持つ短波長,高透過能から、回折実験によって、高い散乱ベクトルQ(300nm)まで(吸収補正などの)データ補正のほとんど必要ない精度の高い構造因子S(Q)を得ることが可能となった。SiO,GeO,BOガラスなどの基本的なネットワーク形成酸化物ガラスの高エネルギー単色X線回折による高精度のS(Q)データに、逆モンテカルロ・シミュレーション(Reverse Monte Carlo Simulation = RMC)法を適用することによって、ランダム系物質の物性を研究するうえ上で極めて重要であるにもかかわらずこれまでデータ解析がほとんど不可能であった中距離構造(短範囲構造ユニットのつくるリング構造など)の信頼できるモデルを構築することに成功した。今後、ランダム系物質の特異な物性は、本研究で示されたような、中距離構造を含む大きな構造モデルをベースに理解が進むものと考えられる。
小原 真司*; 鈴谷 賢太郎
Physics and Chemistry of Glasses, Vol.43C 2002, p.51 - 54, 2002/00
第三世代放射光源SPring-8より得られる高強度の高エネルギー単色X線の持つ短波長,高透過能から、回折実験によって、高い散乱ベクトルQ (350nm)まで(吸収補正などの)データ補正のほとんど必要ない精度の高い構造因子S(Q)を得ることが可能となった。最も典型的なネットワーク形成酸化物ガラス:シリカ(SiO)の高エネルギー単色X線回折による高精度のS(Q)データに、逆モンテカルロ・シミュレーション(Reverse Monte Carlo Simulation = RMC)法を適用することによって、ランダム系物質の物性を研究するうえで極めて重要であるにもかかわらずこれまでデータ解析がほとんど不可能であった中距離構造(短範囲構造ユニットのつくるリング構造など)の信頼できるモデルを構築することに成功した。今後、ランダム系物質の特異な物性は、本研究で示されたような、中距離構造を含む大きな構造モデルをベースに理解が進むものと考えられる。
小原 真司*; 鈴谷 賢太郎
放射光, 14(5), p.365 - 375, 2001/11
第三世代放射光施設における高エネルギーX線回折は、液体やアモルファス固体,ガラスなどのランダム系物質の構造解析に大きな進歩をもたらした。特に、X線の波長が短いため、高い散乱ベクトルQまで測定できるので、実空間分解能が飛躍的に向上した。また、X線の強度と透過能が高いため、少量の試料を透過法で測定できるので、高温高圧下での測定も比較的容易である。したがって、これまで(パルス)中性子回折によって調べられてきたランダム系物質のデータとの直接比較が可能である。われわれは、SPring-8において、ランダム系物質専用の高エネルギーX線回折計を建設し、いくつかの酸化物ガラス(SiO及びGeOガラス)の中距離構造を明らかにした。特に、高エネルギーX線回折とパルス中性子回折の両データに、逆モンテカルロシミュレーションを適用し、中距離構造を含むガラスの大きな構造モデルの構築に成功した。これらの高エネルギーX線回折を中心とした、ランダム系物質の短・中距離構造の精密な構造解析法は、高温下でのランダム系物質の構造変化を調べる研究などにも適用され、SiOガラスは1000の高温下でも短距離構造は変化せず、わずかに平均的な中距離構造に変化が現れるだけであることが明らかになった。
小原 真司*; 鈴谷 賢太郎; 柏原 泰治*; 松本 徳真; 梅咲 則正*; 坂井 一郎*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A, 467-468(Part.2), p.1030 - 1033, 2001/07
被引用回数:138 パーセンタイル:99.12(Instruments & Instrumentation)高エネルギーX線の利用は液体やガラスなどの回折測定において、透過法で高いQまで測定できるため、正確な構造解析を可能にする。そこで、われわれは高強度の高エネルギーX線が利用できるSPring-8の偏向電磁石ビームラインBL04B2に液体・非晶質専用の水平型2軸回折計を設計、製作した。湾曲Si(111)モノクロメーターによる37.7keV及び湾曲Si(220)モノクロメーターによよる61.7keVの高エネルギーX線単色光を用いた回折実験を行い、標準試料であるシリカ(SiO)ガラスで、Q=30Åを超える高Q領域まで精度よく構造因子S(Q)を決定することに成功した。
米田 安弘*; 小原 真司*; 鈴谷 賢太郎; 梅咲 則正*
Physics and Chemistry of Glasses, 41(5), p.282 - 285, 2000/10
シンクロトロン放射光からの高エネルギーX線による回折実験は、これまで液体や非晶質の構造解析の手段として強力な役割を担ってきたパルス中性子回折と並ぶ、あるいは一部それを上回る実験手段である。これまで、第3世代放射光施設を利用していくつかの成果が出されている。本研究では、大変強い高エネルギーX線単色光が得られるSPring-8においてBOガラスの回折実験を行った。BOガラスは、典型的かつ基本的なネットワークガラスの一つで、数多くの構造研究がなされているが、BOが自由につながっているのか、BOのボロクソールリングがユニットを形成しているのか、未だに決着がついていない。そこで、本研究では、高エネルギーX線回折の結果とパルス中性子回折の結果を併用し逆モンテカルロ法を両データに同時に適用することにより信頼性の高い構造モデルを得ることを試み、新しい知見を得た。
小原 真司*; 鈴谷 賢太郎; 大野 英雄
溶融塩および高温化学, 43(2), p.41 - 52, 2000/05
高エネルギーX線回折(40~300keV)がSPring-8などの第3世代放射光で行うことが可能になってきている。高エネルギーX線を用いることにより、ガラスや封入された液体を透過法で測定できるほか、吸収補正が小さく、また高い波数ベクトルQまで測定できるので、高い実空間分解能を得ることができる。したがって、ガラスや液体の構造を正確に調べるには、これまで行われてきた中性子回折やX線異常散乱に加えて、この高エネルギーX線回折を併用するのが効果的である。逆モンテカルロ法(RMC)は、このような複数の実験データを説明する構造モデルを構築する方法であり、正確な実験データに適用するほど、信頼性の高いモデルが得られる。われわれは、SPring-8において高エネルギーX線回折実験を進めており、パルス中性子回折の結果と併せてRMCによって、数々の液体やガラスの構造を明らかにしてきており、その結果をレビューする。
米田 安宏
no journal, ,
SPring-8偏光電磁石ビームラインは臨界エネルギーが28.9keVと非常に高く広範囲のエネルギーを取り出すことができる。これに集光素子である結晶ベンダーを組み合わせることによって、60keVの高エネルギーX線回折実験を実施することが可能となる。高エネルギーX線の高い透過力を利用して、セラミックス粒内のコヒーレントな成分の相転移挙動を評価した。この特性を利用して、ニオブ系ペロブスカイトの(Na,K,Li)NbOやビスマス系ペロブスカイトの(BiNa)TiOにおいて高エネルギーX線回折実験を行ったところ、Bragg反射の強度変化を伴う構造相転移を観測することができた。この技術を原子力関連材料である窒化物燃料模擬物質についても適用したので、合わせて結果を報告する。
米田 安宏
no journal, ,
放射光高エネルギーX線を利用した2体相関分布関数を利用した強誘電体のナノスケールレンジの構造解析について、リラクサー強誘電体とニオブ酸カリウムナノ結晶への適用例について講演を行う。
米田 安宏; 宅和 千隼*
no journal, ,
Ceramics based on (Na,K)NbO have attracted considerable attention as an important type of lead-free and bismuth-free piezoelectric material in recent years because of their excellent piezoelectric properties. Synchrotron X-ray powder diffraction data were collected in the transmission mode at the beamlines BL04B2 and BL14B1 of SPring-8. The crystal structure fluctuates between tetragonal and orthothombic structures depending on Ta substitution. We used the Rietveld and PDF analyses of high-resolution synchrotron X-ray scattering data to bridge the local and average structures.
米田 安宏; 宅和 千隼*; 小舟 正文*
no journal, ,
高エネルギーX線回折実験から得られる2体相関分布関数をニオブ系酸化物強誘電体に適用した。優れた圧電特性を持つ(NaKLi)NbO - Ca(ZrTi)Oは、わずかな添加物によって平均構造が変化する。平均構造の変化に伴う局所構造の変化の有無を調べるためにサンプルの密度やグレインサイズを一致させて測定したところ、3から10近辺の局所構造にほとんど差異はなかった。違いはナノスケールオーダー領域でコヒーレンスの違いが大きく、強誘電的ドメインサイズの違いが示唆された。